速報①では、五度圏重心に基づく方向性・滞留・PC集合構造の指標から、作曲家間の分離構造を見た。続報では視点を変え、ピッチクラス集合そのものの離散フーリエ変換(DFT)が、作曲家間でどのような周期構造の違いを示すかを報告する。
6.f5は第一空間だが、唯一ではない
55楽章それぞれについて、f1〜f6のうち振幅が最大のモード(Dominant_Mode)を集計すると、f5が28/55(50.9%)、f4が17(30.9%)、f3が9(16.4%)、f6が1(1.8%)であり、f1・f2が最大となる楽章は存在しない。
五度圏(f5)が西洋音楽の分析における「第一空間」であることは、約半数の楽章で裏付けられる。しかし、それだけでは記述しきれない楽章が、f3・f4を合わせてほぼ同数存在する。

DFTモードプロファイル
図4. 左:作曲家別のDominant_Mode構成(積み上げ棒)。右:作曲家別の平均f5振幅(棒、左軸)と平均Fourier_Concentration(棒、右軸)。
図4左から、f5優勢が作曲家ごとに大きく偏ることが分かる。Mahler(11/11)はすべてf5優勢である一方、Brahms(0/4)はf5優勢の楽章を持たず全てf4優勢、Pettersson(11曲中f5優勢はわずか1曲)はf3・f4にほぼ均等に分裂する。
いくつかの点を付記する。
Dominant_Mode_Shareの作曲家別平均は0.21〜0.24という狭い範囲に収まる。すなわち、モードの交代は劇的な断絶ではなく、僅差での優劣交代として起きている。
5作曲家(マーラー・ブルックナー・シベリウス・ブラームス・ペッテション)の中で、f5平均振幅が突出して低いのはペッテションのみ(0.400。他は0.51〜0.58)である(図4右)。
Fourier_Concentrationも同様にペッテションが最低(0.0103)、ブラームスが最高(0.0350)である。すなわちペッテションは、どのモードが優勢かという問い(f5が後退する)だけでなく、そもそも単一モードへの集中度自体が低いという、二重の意味で周期構造が希薄化している。
7.次回予告
続報以降では、1.3節(拡張指標が与える作曲家プロフィール)、1.4節(Anisotropy_RatioとAvg_rによる二種類の「調性希薄化」の分離)、1.6節(分析粒度A/B/Cという次元)を、個別作曲家の時系列分析と接続しながら報告する予定である。
(2026.10.8 公開)
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