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2026年6月14日日曜日

交響曲はどのように「考える」のか——音楽の構造を地図にする試み(2026.6.23 改訂)

 

はじめに——数字で音楽を読む、という発想

交響曲を聴くとき、私たちは作曲家の感情や物語を感じとろうとします。でも「この音楽はどこかブルックナーっぽい」「マーラーは他の誰とも違う」という直感的な印象は、いったい何に由来するのでしょうか。

そのような問いに、データ分析という方法で向き合った研究を行いました。ハイドンからペッテションまで6名の作曲家、41楽章の交響曲の主要楽章(単一楽章の作品の場合には全曲)を対象に、音の動きを数値化してマッピングし、「各作曲家の音楽がどんな空間を動き回っているか」を可視化しようという試みです。

ただしこの研究は、単に「どの作曲家の音楽が複雑か」を測りたいわけではありません。もっと大きな問いがあります——音楽の中に「主体」はどのように宿っているのか、という問いです。


「音楽的主体」とは何か

「主体」というと難しく聞こえますが、ここでの意味はシンプルです。ある音楽を聴いたとき、私たちはそこに「語りかけてくる何か」「進もうとする力」「葛藤したり安定したりする動き」を感じます。その「感じ」を生み出している音楽内部の仕組みのことを、この研究では「音楽的主体」と呼びます。

それは作曲家の気持ちではなく、音の組織そのものの中に埋め込まれた論理のことです。ブルックナーの音楽に宿るものとマーラーのそれとシベリウスのそれは、感覚的に明らかに違います。この研究は「その違いを言葉だけでなく、計量的に示せるか」に挑戦しています。


五度圏という地図——音の「重力」を測る

この研究の核心的な分析ツールが五度圏の重心分析です。少し説明しましょう。

音楽には、ある音が「安定している」「不安定で解決を求めている」という感覚があります。ハ長調ならドの音が「家」で、遠い音ほど「遠くに来た感じ」がします。この「近い・遠い」関係を整理したのが五度圏です。ドから完全五度ずつ積み上げていくと(ド→ソ→レ→ラ→…)、やがて一周して元に戻る——その円環が五度圏です。

この研究では、ある瞬間に鳴っている音たちが五度圏のどこに集まっているかを計算し、その「重心」(音の集まりの中心点)を求めます。

重心が五度圏の円の縁に近い——安定した調性の響き。 たとえばハ長調の主和音(ド・ミ・ソ)を考えてみましょう。この3音は五度圏上でほぼ同じ場所に集まっています。重心は円の縁の近く、「ハ長調の家」のあたりに位置します。聴き手はここに「落ち着いた」「家に帰った」感覚を覚えます。

重心が中心に近い——音が広く分散した、調性的に宙づりの響き。 一方、ド・ミ・ソ・シ・レ・ファ・ラという7音が同時に鳴っているとしましょう。これだけ多くの音が鳴ると、五度圏上の音は広い範囲に分散します。重心は円の中心に引き寄せられ、「どの調性にも属さない」浮遊した響きになります。後期ロマン派の交響曲に頻繁に現れる、方向感の定まらない緊張感はこうした状態に対応します。

重心がどう動いていくか——旅の経路。 音楽が時間の中で展開するにつれ、この重心は動き続けます。たとえばハ長調の主和音(ド・ミ・ソ)からト長調の主和音(ソ・シ・レ)へと転調する瞬間、五度圏上の重心はわずかに隣の「ソの方向」へ移動します。これは穏やかな一歩です。しかし遠い調性へ急激に転調したり、多くの音が一度に変化したりすると、重心は大きく飛躍します。この「重心がどれくらい激しく、どんな方向へ動いたか」の総体が、その音楽の「旅の経路」を描き出します。

この重心はどの時点の音を使って計算しているのか、補足しておきます。 MIDIデータから各小節の先頭の拍(拍頭)で実際に鳴っている音を取り出し、そのピッチクラス(オクターブの違いを無視した音名)の集合について重心を計算しています。つまり小節の中で経過音や倚音がどのように動こうと、それらは重心計算には反映されません。和声理論的に「これは和声音か非和声音か」を判定する処理も行っていません。鳴っている音はすべて等価に扱われます。

また、同じ和音であっても低音に何の音が来ているか(たとえば基本形か四六の和音か)という転回形の違いも、ピッチクラスという音名だけの情報では区別されません。ドミソという音の集合であれば、根音がドにあろうとソにあろうと、重心の位置は同じです。

この方法は、和声分析者が聴いて判断する「機能和声としての響き」とは別の、ある種の「機械的な近似」です。倚音が作り出す瞬間的な緊張や、転回形による響きの色合いの違いは、この重心軌道には現れません。その代わりに、小節という単位で音楽全体を均一に扫描し、長大な交響曲全曲を通じた変化のパターンを追跡できるという利点があります。

こうして各楽章を通じた重心の動きのパターンから、複数の指標(どれくらい激しく動くか、どれくらい広い範囲を旅するか、など)を算出します。


自由エネルギー原理(FEP)とは——生き物の「勘違いを減らす」戦略

ここで、この研究が参照する理論的な枠組みを紹介しなければなりません。**自由エネルギー原理(Free Energy Principle、FEP)**です。

FEPは神経科学者カール・フリストンが提唱した理論で、「生き物はなぜそのように行動するのか」を説明しようとするものです。ポイントはこうです。

私たちの脳は、世界をそのまま見ているわけではありません。脳は常に「こうなっているはずだ」という**予測(生成モデル)**を持ち、実際に感覚器から入ってくる情報と予測のズレ——予測誤差——を最小化しようとしています。

あなたが暗い部屋でドアが開く音を聞いたとき、「風かな?猫かな?」と一瞬で複数の仮説を立て、どれが一番そのズレを小さくできるかを評価する。これがFEP的な「知覚」です。行動もまた、予測誤差を減らすための一つの手段です(「確かめに行く」)。

FEPが描く主体は、明確な境界を持ち、内部モデルで世界をシミュレートし行動によって誤差を解消しようとする存在です。これが「動物型主体」と呼ばれるものです。

では、動物とは違う存在——たとえば植物は?植物も環境に応答します。でも「確かめに行く」ことはしません。光に向かってゆっくり成長する、根が水源の方向に伸びる——これは「行動による誤差解消」ではなく、成長の形そのものが環境への応答になっています。これを「植物型主体」と呼びます。

この「動物型か植物型か」という対比が、音楽の分析に活かされます。


音楽と五度圏重心とFEPをつなぐもの

五度圏の重心分析とFEPは、どのように結びつくのでしょうか。

五度圏の重心が「縁に近い」状態は、音楽が特定の調性に集中し、予測可能な展開をしている状態です。FEP的に言えば、生成モデルが安定して機能しており、予測誤差が小さい。逆に重心が中心に向かって落ちていく動きは、調性的な「重力」が弱まり、予測が立てにくくなることに対応します。

また重心がどれくらい激しく動くか、どれくらい広い範囲を飛び回るか、どれくらい頻繁に大きく跳躍するかは、「音楽という主体がどのように誤差と向き合っているか」の指標になります。

  • 大きく力強く動き回るのは「誤差に積極的に向き合い、行動で解決しようとする動物型主体」

  • ゆっくりと、環境に溶け込むように動くのは「誤差を解消するのではなく、形の変化として吸収する植物型主体」

  • 重心が動かず凝集したままなのは「安定した生成モデルが効率よく機能している古典的主体」


「音楽の地図」はどのように作られるか——指標の抽出と次元圧縮

五度圏の重心分析によって、各楽章の各小節に「その瞬間の音の重心座標」が得られます。しかしそのままでは膨大な数値の羅列であり、作曲家同士を比較する「地図」にはなりません。そこで二つのステップを踏みます。

まず、重心の動きのパターンから9種類の指標を算出します。たとえば「重心が五度圏の縁にどれくらい近いか(平均)」は調性の安定度を、「重心がどれくらい激しく動くか」は転調の歩幅を、「重心がどれくらい広い範囲を動き回るか」は音高空間の利用域を、「三和音以上が鳴っている小節の割合」は和声の厚みを示します。こうして一つの楽章が、9次元の数値ベクトルとして表現されます。

次に、この9次元の数値群を**主成分分析(PCA)**という手法で二次元に圧縮します。PCAとは、多数の変数の中から「全体のばらつきを最もよく説明する方向」を順番に見つけていく手法です。身長・体重・骨格など多くの身体測定値を持つ集団があるとき、「全体として最も人を区別できる軸」を探すようなイメージです。今回であれば、41楽章の9指標のうち「作曲家間の違いを最もよく説明する方向」が第一主成分(PC1)として、それと直交する次に重要な方向がPC2として抽出されます。

こうして41楽章それぞれが、PC1とPC2という二つの数値で表せるようになり、それを平面上に点として打てば「音楽の地図」が完成します。この地図の縦横の軸が何を意味するかは、どの指標がPC1・PC2に強く寄与しているかを見ることでわかります——それが次のセクションで述べることです。

分析対象とした作品(楽章)は以下の通りです。

作曲家

対象作品(楽章)

ハイドン

交響曲第100番「軍隊」第1楽章、第101番「時計」第1楽章、第104番「ロンドン」第1楽章

ブルックナー

交響曲第0番・第2番・第3番・第4番・第5番・第7番・第8番・第9番、各第1楽章

マーラー

交響曲第1番〜第4番,第6番~第10番(未完の第10番を含む)各第1楽章、第5番第2楽章、第6番第4楽章、大地の歌第1楽章

シベリウス

交響曲第2番第1楽章、第6番第1楽章・第4楽章、第7番(単一楽章)、タピオラ(単一楽章)

ショスタコーヴィチ

交響曲第9番・第10番、各第1楽章

ペッテション

交響曲第6番〜第16番(第8番は2楽章構成だが全曲を単一の対象として分析、その他は単一楽章作品として全曲)

楽章を選ぶ際の原則は、複数楽章からなる作品については第1楽章を中心とし、分析上の理由がある場合(序奏が第1楽章として独立した場合やフィナーレが主要楽章に準ずると考えられる場合など)に限って他の楽章を加えるという方針です。単一楽章の作品(シベリウスの第7番・タピオラ、ペッテションの作品の多くなど)はその全曲を対象としています。なおペッテションの第8番は形式上2楽章から成りますが、MIDIデータが全体で1ファイルとして作成されており、また第1楽章のみを独立した分析単位とみなす音楽的な根拠も薄いことから、全曲を一つの対象として扱っています。


地図の「縦軸」と「横軸」が語るもの

こうして41楽章を二次元の地図(主成分分析によるPCA散布図)に配置すると、作曲家ごとに特徴的な「居住域」が現れてきます。(図1)

図1:PCA散布図——作曲家別作品分布(PC1 vs. PC2)。楕円は固有値分解による主軸方向+75パーセンタイルスケーリング。×は各作曲家の対象作品の平均。矢印は各作曲家の対象作品の時系列順で●が起点、▲が終点を示します。橙:ハイドン、赤:ブルックナー、緑:マーラー、紫:シベリウス、靑:ショスタコーヴィチ、靑緑:ペッテション

散布図を眺める前に、この地図の軸そのものが何を意味しているかを確認しておきましょう。

横軸(PC1)は「調性の重力」の強さを示します。 右に行くほど音は特定の調性中心に凝集し、左に行くほど調性的な「故郷」から遠ざかります。ハイドンが最右端に、ペッテションの後期作品が最左端に位置するこの軸は、FEP的に言えば「生成モデルがどれくらい安定して世界を予測できているか」の軸です。右にいるほど予測は精確で、誤差は構造化された形で処理される。左に行くほど予測の枠組み自体が揺らぎ、生成モデルの再構築を迫られる圧力が高まります。

縦軸(PC2)は一言では言い表しにくく、そこに面白さがあります。 正方向(上)は音高空間の広い利用と跳躍の激しさ、負方向(下)は調性焦点への収斂と音高集合の充実として現れますが、同じ「上」に位置していても、その内実は作曲家によって異なります。ブルックナーの「上」は音高空間が静かに広がっていく場の拡張であり、ショスタコーヴィチの「上」は激しい跳躍と内部充実度の希薄化が同時に起きる乖離の表れです。この軸は「主体が環境とどのような距離感で向き合っているか」——没入か、離反か、純化か——を、複数の異なる経路を通じて示す軸だと言えます。

この二軸を組み合わせると、音楽的主体の存在様式はおよそ次のように整理されます。「重力が強く、環境に収斂する」領域(右下)にはハイドンに代表される古典的な主体の規範形があります。「重力を保ちながら場が広がっていく」領域(右上)にはブルックナーの前主体的な力学系があります。「重力が落下しながら空間が激しく動く」軌跡(右から左への降下)にはマーラーの裂開する主体の時間的展開があります。「重力は変動しながらも収斂の方向に向かい、跳躍は最小化される」領域(左下への沈降)にはシベリウスの環境内在的な植物型主体があります。そして「重力が最も遠くまで失われた」領域(左端)にはペッテションの、崩壊しながら持続する主体があります。

地図の右から左への移動が「調性崩壊の歴史的進行」を意味するとするなら、上下の軸はその崩壊がどのような様式で起きたかを示しています。崩壊には一つの道しかないのではなく、場として広がる道、激しく格闘しながら落ちる道、環境に溶け込みながら純化する道、損傷のまま持続する道——それぞれが固有の存在様式として、地図の異なる場所に刻まれています。


地図に描かれた「主体の宇宙」

軸の意味を踏まえたうえで、各作曲家の「居住域」を見ていきましょう。

ハイドンは地図の一角に、他の誰からも離れた場所に位置します。PC1が全作曲家中最も高く、PC2は最も負——つまり「調性の重力が最も強く、音高空間が最も収斂している」極点です。予測誤差が最も効率的に処理される「古典的生成モデルの規範形」であり、音楽は整然と機能し、主体がそこに「いる」ことが当然のように成立しています。他のすべての作曲家の位置はここからの距離として測られます。

ブルックナーはPC1が正値域に安定して留まりながら、後期に向けてPC2が緩やかに上昇する軌跡を描きます。この上昇の内実は、音高の跳躍が激しくなるのではなく、音高空間が静かに広がっていくことによって駆動されています。「強固な自己が前へ進む」のではなく「音楽が場として広がり、鳴り続ける」——哲学者チャールズ・テイラーが「多孔質的な自己」と呼んだ、境界が外に開いた存在のあり方と対応します。FEPで言えば、主体とその外部の境界が薄く、環境が主体を「通り抜けて」いくような状態です。

マーラーの地図上の特徴は「最も広い」ことではなく、PC1の正から負への落差が最も劇的であることです。初期作品の高い調性凝集度から出発し、中期に急速に「拡散」し、後期には調性的重心が負方向へ深く落ちていく。そしてその過程は一直線ではなく、一部の作品では一時的に正方向へ回帰するなど複雑な折れ線を描きます。この時系列的な降下の「物語性」——積極的に誤差と格闘し、克服しようとしては失敗し、また格闘するFEP的動物型主体が「過剰化し、裂開していく」過程——こそがマーラーの計量的肖像の核心です。

シベリウスは地図全体でみるとPC1の幅ではマーラーに匹敵するかそれ以上の広がりを持ちますが、その動きの質がまったく異なります。作品全体を通じてPC2は負値域に揃っており——つまり音高空間の利用は比較的収斂的で、激しい跳躍よりも音高集合の内的充実を優先する傾向があります。一方でPC1は大きく変動し、ある作品はハイドンに近い調性凝集度を示し、別の作品は負方向の遠端へと沈んでいく。前者は音の跳躍が最も少なく、音高集合の充実度は高く、かつそれが一点に収斂するという逆説的な特徴を示します。これは古い対位法的な書法への遡行に対応しており、「弱い主体」でも「失敗した主体」でもなく、戦略的な行動原理とは根本的に異なる仕方で環境に内在する「植物型主体」の純化として理解されます。

ショスタコーヴィチは地図の別の角に、他の誰とも異なる孤立した位置を占めます。PC2が突出して高く、しかも2作品がほぼ同じ高さに並んでいる——つまりPC2方向への偏りは極端ですが、PC2内での散布は極めて小さい。音の跳躍は激しく広大ですが、実際に使われる音高の集合は狭い——表面の動作と内部の構造が乖離しています。これは「形式の外皮を空の器として借用し、その中身は外部条件によって規定される」様態として解釈され、形式の内部に主体が生成するのではなく、外部から強制された主体の痕跡として読まれます。

ペッテション(20世紀スウェーデンの作曲家、マーラーの精神的後継者とも言われる)は地図の最も遠い辺境に位置し、PC1の幅とPC2の幅の両方を合わせた「占有面積」では全作曲家中最大です。調性的重心が最も遠くまで落下し、生成モデルの「崩壊」が最も進んだ状態を示します。しかし崩壊で終わるわけではない。ある時期の作品で最深部に達したあと、後期の作品群は最深部には戻らず、一種の「慢性的損傷のうちに固定化された持続」という独自の位相に落ち着きます。マーラーのように克服と崩壊が弁証法的に展開するのではなく、崩壊後の状態がそのまま持続する——これがペッテションの音楽的主体の存在様式です。


この研究が示すこと

この研究の重要な主張の一つは、調性の「崩壊」は一方向の直線的進行ではないということです。マーラーのように裂開する道、ブルックナーのように場として拡張する道、シベリウスのように環境へと溶け込む道——それぞれが、音楽的主体の異なる存在様式として、地図の異なる領域に収まります。

また、ブルックナーとショスタコーヴィチはともに「音高空間の広い利用」という表面的特徴を共有しながら、その内部機制がまったく異なります。前者は空間的な場の緩やかな拡張、後者は跳躍の激しさと内部充実度の希薄化という、正反対の理由で似た数値を示す——この発見は、数値の「見た目」が同じでも、音楽が実際にやっていることはまったく違いうることを示しています。

理論と計量のこうした往復を通じて、「なぜブルックナーはブルックナーなのか」「なぜシベリウスはあのような音楽しか書けなかったのか」という問いに、感覚的な印象論でもなく、純粋な数字の羅列でもない仕方で向き合おうという試みが、この研究の核心にあります。

(2026.6.14 公開, 6.23加筆)

2026年5月21日木曜日

交響曲的思考における音楽的主体の存在様式——調性構造のPCA分析によるFEP的解釈(2026.5.21 更新)

 

1. 問題設定と方法

本稿は、19世紀後半から20世紀の交響曲作品において「音楽的主体」がいかなる存在様式として仮定されているかを、調性構造の計量分析を通じて検討するものである。ここでいう「主体」とは作曲家の心理や表現意図を指すものではなく、音楽的時間の組織、形式の成立条件、力学的進行の様態のうちに暗黙裡に前提される存在論的な位置づけとして理解される。本稿の理論的枠組みと問題設定は、別稿「交響曲的思考における音楽的主体の存在様式についての覚書」(以下、覚書)において詳細に展開されており、本稿はその計量的照合・検証・拡張として位置づけられる。理論的背景の詳細については覚書を参照されたい。

理論的参照枠として本稿が用いるのは自由エネルギー原理(FEP)であるが、それは説明理論としてではなく、主体モデルを抽象化した反照的装置として機能する。FEPが前提とするマルコフ・ブランケット(内部/外部境界)の有無、生成モデルの安定性、予測誤差最小化の様態は、音楽における主体の成立条件を照らし出す概念的枠組みとして用いられる。

FEP的主体は便宜上二型に区別できる。動物型主体(standard active inference)は明確な境界を持ち、中枢化された内部モデルによって世界を不確実性として表象し、行為によって予測誤差を低減する。植物型主体(non-strategic inference)は境界を持ちながらも環境操作を前提とせず、応答は行為ではなく形態の変化として現れ、誤差は解消されるのではなく成長様式に吸収される。この二型の区別は、後述するシベリウス的主体の位置づけにとって不可欠な補助概念として機能する。

分析対象は8名の作曲家(Haydn、Mozart、Brahms、Bruckner、Mahler、Sibelius、Shostakovich、Pettersson)の主要交響曲楽章計45点である。MIDIデータから抽出した9変数(Avg_r、Avg_Step、SD_r、Step_Rate_100、PC_Density、Tonal_Focus、Spatial_Dispersion、Harmonic_Coverage、Texture_Volatility)に対して主成分分析を行い、得られた2主成分スコアを分析の基盤とする。(各指標の定義については付録Aを参照。)

PC1(調性凝集度軸) は正方向に高いAvg_r・低いステップ量・低いPC密度(古典的調性中心性)を、負方向に低いAvg_r・高いステップ量・高いPC密度(調性的分散・複雑性)を対応させる。FEP的文脈ではPC1の高さは生成モデルの予測精度と対応し、その低下は予測誤差の増大と生成モデルの再構成圧力の上昇を意味する。

PC2(空間的分散軸) は主としてSpatial_Dispersion(ローディング+0.66)と音高跳躍の大きさ・頻度(Avg_Step、Step_Rate_100、いずれも+0.37)によって正方向が規定され、Tonal_Focus(−0.65)とHarmonic_Coverage(−0.53)によって負方向が規定される。この軸の解釈には後述するように注意が必要であり、PC2の正値は単一の原因によるものではなく、「空間的拡張」と「跳躍頻度の増大」という機制的に異なる二経路が存在する。 なお、主成分負荷(PCAローディング)については付録Bを、各作品の主成分得点については付録Cを、主成分分析の入力を含む全指標値については付録Dを参照。


図1:PCA散布図——作曲家別作品分布(PC1 vs. PC2)。楕円は固有値分解による主軸方向+75パーセンタイルスケーリング。★は重心。矢印は時系列順。


2. 参照点:古典的生成モデルとその安定形

2.1 規範的生成モデルの極:Haydn・Mozart

PC1平均値はHaydn +3.09、Mozart +3.59と全作曲家中最高値を示し、PC2はいずれも −2.73〜−2.77と突出して低い。PC2の強い負値はTonal_Focusの最大化とHarmonic_Coverageの高さを意味する。これはFEP的に「精度加重された予測誤差の最小化が最も効率的に達成された状態」として読める。古典的調性文法という階層的生成モデルが安定して機能し、予測誤差が構造化された形で処理される。両者はPCA空間において「規範的生成モデルの極点」として機能し、他の全作曲家の位置づけの参照軸を提供する。

2.2 主体が問題化されない安定形:Brahms

PC1平均 +0.60(範囲 −0.61〜+1.29)、PC2平均 +0.13。Brahmsにおいて主体は形式の内部に安定的に位置づけられており、その成立や崩壊自体が問題化されることはない。強固な形式意識、歴史的様式の内在化、動機労作の厳密な因果性は、FEP的「健全な動物型主体」として安定的に機能する状態に対応する。

4作品という標本の制約から軌跡の記述には留保が必要だが、全作品が −0.61〜+1.29 の比較的狭い範囲に収まり、生成モデルの基盤的安定性は数値的に支持される。本分析における役割は、FEP的脱構築が問題化される以前の位相の計量的参照点である——すなわち主体の「問題化されない形」の計量的指標として機能する。


3. 三項図式の計量的照合

3.1 前主体的力学系:Bruckner

PC1平均 +1.39(範囲 0.45〜2.24)、PC2平均 +0.83。後期作品(Sym5〜9)でPC2が平均+1.28 へ緩やかに上昇する。この上昇の機制を生データで確認すると、主としてTonal_Focusの低下によって駆動されており、Avg_Stepは40〜50程度(全体平均 48.7)に留まる。Spatial_Dispersionは一貫して高く、更に後期では緩やかに上昇傾向にある。 この数値的特徴は、クルト的ブルックナー解釈——「解決を志向するシステム」ではなく「緊張を保ち続ける場」——と整合する。PC1が正値域に安定して留まりながらも、PC2のSpatial_Dispersionの高さおよび更なる上昇が「空間的拡張」として展開するという構造は、予測誤差の「解消」ではなく「持続的な場の維持」として機能する力学系の計量的指標として読める。 テイラーの「多孔質的自己(porous self)」——内面と外界の境界が弱く、外部的な力が通過していく場——という記述と対応する数値的特徴は、まさにPC1が比較的高い(生成モデルの基盤は保たれている)にもかかわらず、マルコフ・ブランケット的な「閉じた境界」を示す変数(高いTonal_Focus)が後期に向けて低下していくという軌跡に見出すことができる。音楽は「語る」のではなく「鳴り続ける」——この記述はPC1正値の持続とPC2のSpatial_Dispersion的拡張という組み合わせとして計量的に対応している。

3.2 裂開する動物型FEP主体:Mahler

PC1平均 +0.50、範囲 −1.55〜+3.44(幅4.89)は全作曲家中最大。この極端な散布範囲自体が、覚書が記述する「主体は明確に成立しているが、声・引用・アイロニーによって絶えず分裂し、過剰化する」というMahler的主体の不安定性を最も直接的に反映する計量的事実である。 時系列的に追うと以下の軌跡が確認できる。初期群(Sym1〜4): PC1 +1.41〜+3.44、PC2 −0.82〜+0.86。高い調性凝集度を維持しながらPC2が作品ごとに揺れる。覚書が「境界が声に外在化」された段階として記述する初期様式の、器楽的テクスチャへの着地。中期(Sym5〜7): PC1 −0.69〜+0.04、PC2 +0.03〜+1.12 へと降下・上昇。純器楽による「緩衝された自己(buffered self)」確立の試みが、PC1の漸次低下として現れる。 Sym8の数値(PC1 +0.56、PC2 −0.69) は特に注目を要する。中期の低迷から一転してPC1が正値へ回復し、PC2は全Mahler作品中最低値を示す。これは声楽・合唱という外部的アンカーによる生成モデルの一時的安定化として読めるが、Tonal_Focusへの回帰という形で現れることは、覚書が指摘する「声の再導入(但し初期とは機能が異なる)」——初期において声は境界を外在化するものだったが、Sym8では生成モデル全体の較正装置として機能する——という区別と計量的に整合する。 後期(Sym9〜10): PC1 −0.52〜−1.55、PC2 +0.49〜+1.29。調性的凝集度の失墜と音高空間の拡散が併進し、Sym10-1(PC1 −1.55)で生成モデルの最終的崩壊に至る。覚書の「後期:過剰化・破綻」という記述は、この数値的軌跡の中で最も精確に計量的支持を得る。

3.3 環境内在的・植物型主体:Sibelius

PC1平均 +0.66、範囲 −2.16〜+2.89(幅5.05)はMahlerに並ぶ広さを示すが、その軌跡の「質」が根本的に異なる。Sym3-1(PC1 +2.89)→ Sym2-1b(−0.36)という逆行、Sym6-1(+3.32)という高PC1への回帰、そしてTapiola(−2.16)への最終降下は、一方向的崩壊ではなく非線形的・非目的論的な展開を示す。これは覚書が「動機が発展せず、形式があたかも環境圧で決まるかのような独特の論理」と記述する様態と対応する。 特に注目すべきはSym6-1のPC2(−2.75)であり、これは全45作品中の最低値に近い。生データを確認すると、Tonal_Focus 0.289、Harmonic_Coverage 0.831に加えて、Avg_Step 31.9という値が確認できる——これは全45作品中の最低水準である。すなわちSym6-1においては、音高の跳躍が最も少なく(Avg_Step最低)、音高集合の充実度は高く保ちながら(Harmonic_Coverage高)、それを一点に収斂させる(Tonal_Focus)という三重の構造が重なっている。「大きく跳び回らない」うえに「音高空間に広く分布する」うえにさらに「調性焦点に収斂する」——この逆説的な組み合わせは、PC2が極端に負方向にあることの質的内実を精確に示している。 この数値的特異性は、Sym6第1楽章がドリア旋法を基盤とし、パレストリーナ的対位法の研究成果を反映した様式であるという音楽史的事実と対応する。音高の集合的充実度(Harmonic_Coverage)を保ちながら、跳躍を最小化し(Avg_Step最低)、一点に収斂させる(Tonal_Focus)——これは「古典的調性に回帰した」のでも「調性崩壊に向かった」のでもなく、調性体系以前の対位法的音高組織への「純化」として理解される。古典派の規範点(Haydn・MozartのPC2 −2.73〜−2.77)に並ぶ純化が企図されていると見ることもできる。 この純化がTapiolaへの最終降下の前段階として位置づけられることは、覚書が記述する「主体が誤差を解消すべき問題としてではなく、音楽的形態の変化として吸収し、持続させる」という植物型主体の様態と整合する。 Sibeliusの主体はFEP的動物型主体の「量的縮小形」ではなく、戦略的行為や最適化を前提としない、構造的に異なる主体性の型である——この覚書の核心的主張は、Sym6-1の数値的特異性によって支持される。


4. 外部化された主体の計量的検討:Shostakovich

4.1 PC2正値の二経路:BrucknerとShostakovichの質的差異

Shostakovichの計量的位置づけはPC2平均 +2.87と全作曲家中突出して高い正値を示す点で際立っている。PC2の正値という表面的特徴ではBrucknerと類似するが、その機制は根本的に異なる。 PC2の正方向に寄与する変数はSpatial_Dispersionと音高跳躍の大きさ・頻度(Avg_Step、Step_Rate_100)の二系統である。以下の数値がその差を明示する。

変数

Bruckner平均

Shostakovich平均

Spatial_Dispersion

0.329

0.325

Avg_Step

48.66

68.8

Step_Rate_100

4,852

6,845

Harmonic_Coverage

0.731

0.432

Brucknerのpc2の高さはSpatial_Dispersionの漸進的拡張によって駆動され、Avg_Stepは中程度に留まる。これに対してShostakovichの高PC2は音高跳躍の大きさと頻度の際立った高さによって主として規定されており、さらに決定的なのはHarmonic_Coverageの著しい低さ(0.432 vs Bruckner 0.731)である。すなわちShostakovichは「大きく飛び回るが、使用する音高集合は狭い」という逆説的な構造を持つ。Brucknerの「空間的拡張」とは機制を異にする。

4.2 「外部化された主体」の計量的痕跡と覚書の拡張的解釈

覚書はShostakovichを「形式内部で生成・変容する主体」とは異なる次元に属するものとして位置づけ、本稿の枠組みの「適用限界を示す対照例」と規定した。しかし今回の計量的分析の結果は、この規定を単純に確認するのみならず、覚書の拡張的改訂の可能性を示唆している。

音楽の表面的動作(大きな跳躍)と内的構造(使用音高の限定)の乖離は、覚書が指摘する「古い形式を『空の器』として再利用する」姿勢と計量的に対応する。形式の外皮は保持されながら、その内部を満たすべき調和的・機能的論理が希薄化されている——PC2が高いにもかかわらずHarmonic_Coverageが低いという逆説がこれを示す。

この観点から見ると、Shostakovichの主体は覚書の三項図式における「外部条件によって規定された主体」として、枠組みの内部に——傍証的にではあるが——位置づけることができる可能性がある。「形式内部の主体生成」ではなく「外部条件によって強制された形式借用」という様態が、PC2機制の質的差異として計量的な裏付けを得ているからである。ただしMIDIデータがSym9とSym10の2作品に限られる現状では、この解釈はあくまでも示唆に留まらざるをえない。標本の増加が見込める場合には、覚書の三項図式をShostakovichを含む形で拡張的に改訂することの可能性が、本分析によって開かれたと考える。


5. 損傷した主体の持続:Pettersson

PC1平均 −2.83(範囲 −5.29〜−0.01)、全作曲家中唯一、平均値が明確な負値域に位置する。Sym10(PC1 −5.15)・Sym11(−5.29)は全45作品中の最極値を占め、生成モデルの分解が最も進行した状態を示す。 時系列的軌跡——中期群(Sym6〜8): PC1 −0.01〜−0.96、PC2 -0.27〜+0.78。転換期(Sym9): PC1 −1.84、PC2 +1.22。崩壊極(Sym10〜11): PC1 −5.15〜−5.29、PC2 −1.77〜−1.80。後期群(Sym12〜16): PC1 −2.44〜−4.45、PC2 +0.11〜−1.05——は、覚書が記述する「損傷したまま持続する主体」の様態と精密に対応する。

後期群のPC2が −1〜0 近辺で安定している点は特に示唆的である。正方向(Spatial_Dispersion、跳躍頻度)でも負方向(Tonal_Focus)でもない「中性化」——空間的方向性の喪失——は、覚書が記述する「予測誤差の最小化が創発的展開の原理というより生存のための最低限の自己保存へと縮減されている」状態と対応する。崩壊極(Sym10〜11)のPC2が −1.8 前後という深い負値を示すことも、崩壊過程において空間的収縮が同時に進行したことを示しており、「崩壊を遅らせるための最後の防壁」としての境界機能が計量的に確認できる。 さらに後期作品群が崩壊極の数値(PC1 −5前後)には戻らず、−2〜−4台に留まるという事実は、覚書が「弁証法的運動や形式的再統合へと回収されず、慢性的な損傷と持続のうちに固定化された事例」と記述したことを計量的に支持する。Petterssonはマーラー的な弁証法的崩壊の「次」に来る位相——崩壊後の慢性的持続——を示す事例として、PCA空間上で孤立した位置を占める。


6. 総括:PCA空間における主体の存在様式の地図

以上の分析を総括すると、8名の作曲家はPCA空間上に「調性崩壊の一方向的進行」ではない複数次元からなる布置を形成する。その全体像は以下の表として示される。

作曲家

PC1平均

PC2平均

主体の存在様式

計量的特徴

Haydn・Mozart

+3.09〜+3.59

−2.73〜−2.77

規範的生成モデルの極点

調性凝集・Tonal_Focus最大化

Brahms

+0.60

+0.13

主体が問題化されない安定形

狭い散布域・中間域の安定

Bruckner

+1.39

+0.83

多孔質的・前主体的力学系

Spatial_Dispersion漸増・調性基盤の維持

Mahler

+0.50

+0.26

裂開する動物型FEP主体

最大散布範囲・一方向的PC1降下

Sibelius

+0.66

−1.09

環境内在的・植物型主体

非線形軌跡・PC2負値・Avg_Step最低域

Shostakovich

+0.37

+2.87

外部化された主体(拡張的解釈)

高跳躍頻度・低Harmonic_Coverage・PC2機制の異質性

Pettersson

−2.83

−0.25

損傷したまま持続する主体

全域最低PC1・後期のPC2中性化

本稿の中心的論点は三点に集約される。

第一に、覚書が提示した三項図式(Bruckner:多孔質的前主体、Mahler:裂開する動物型主体、Sibelius:植物型環境内在的主体)は、計量分析によって高い精度で支持される。各作曲家の数値的特徴は、それぞれの主体様態の記述と体系的に対応しており、この対応は単なる偶然の一致ではなく理論的に予測可能な構造を持つ。

第二に、BrucknerとShostakovichがいずれもPC2の正値を示しながら、その機制が根本的に異なるという計量的発見は、覚書の理論的区別の妥当性を補強する。前者はSpatial_Dispersionの緩進的拡張、後者は音高跳躍頻度の突出とHarmonic_Coverageの希薄化という異なる経路によって同様の数値を生ずる——この差異こそが「多孔質的力学系」と「外部化された主体」という存在様式の質的差異の計量的痕跡として読み得る。

第三に、Sibelius Sym6-1の三重の数値的特異性——Avg_Step最低・Harmonic_Coverage高・Tonal_Focus収斂——は、パレストリーナ的対位法への遡行という音楽史的文脈と接続することで、「弱い主体」でも「低エージェンシーの主体」でもない植物型主体の「純化戦略」として読むことができ、戦略的行為原理とは構造的に異なる主体性の型という覚書の核心的記述に数値的根拠を与える。この計量的発見は、Shostakovichに関する拡張的解釈の示唆とともに、覚書の理論的枠組みを計量的分析との往還によってさらに精緻化できる可能性を示している。


付録A:使用指標の定義

各指標は小節頭の和音をサンプリングし、鳴っているピッチクラス数3以上の和音について、12のピッチクラスを単位円上に等間隔(五度圏順に30度ずつ)に配置した五度圏へのピッチクラスセット重心として算出している。

指標

定義

Avg_r(平均重心半径)

重心半径 r = √(x²+y²) の楽章内平均値。調性的安定度(重力)。鳴っているピッチクラスが五度圏上で特定の領域に集中しているほど(例:長三和音)大きく、分散しているほど(例:増三和音・減七和音)小さくなる。

Avg_Step(平均ステップ幅)

隣接データ点間の位相角の変化量(角速度)の平均。転調の歩幅。

SD_r(重心半径の標準偏差)

r の標準偏差。重力の揺らぎ。

Step_Rate_100(100小節あたりステップ量)

100小節あたりの累積移動距離(弧長)。和声的活動量。

PC_Density(ピッチクラス密度)

各小節で使用されるPitch Class数の平均(三和音以上)。和声の複雑さ。

Tonal_Focus(調的集中度)

全軌跡の平均座標の原点からの距離。調性的焦点。

Spatial_Dispersion(空間分散度)

重心位置の時系列的な分散。五度圏上での活動領域の広さ。

Harmonic_Coverage(和音被覆率)

(三和音以上の有効小節数)/(楽譜上の全小節数)。テクスチャの厚み。

Texture_Volatility(テクスチャ揺らぎ)

各小節で使用されるPitch Class数の標準偏差。テクスチャの流動性。

補助指標(PCA非採用):Winding_Rate_100(五度圏上の正味回転速度)およびTerz_Ratio(三度進行比率)は算出したが、PCA入力には含めず補助的指標として扱う。


付録B:主成分負荷(PCAローディング)

PC1・PC2それぞれの正方向の意味は以下の通りである。PC1正方向:高いAvg_r・低いステップ量・低いPC_Density(古典的調性中心性)。PC2正方向:高いSpatial_Dispersion・高いAvg_Step・Step_Rate_100(広域的音高空間利用と高跳躍頻度)。PC2負方向:高いTonal_Focus・低いHarmonic_Coverage(局所的調性焦点化)。

指標

PC1

PC2

Avg_r

+0.977

+0.152

Avg_Step

−0.864

+0.373

SD_r

−0.499

+0.295

Step_Rate_100

−0.866

+0.370

PC_Density

−0.917

−0.306

Tonal_Focus

+0.531

−0.652

Spatial_Dispersion

+0.625

+0.658

Harmonic_Coverage

−0.424

−0.527

Texture_Volatility

−0.785

−0.092


付録C:作品別主成分得点一覧


作曲家

作品

PC1

PC2

Haydn

Sym104-1

+3.094

−2.729

Mozart

Sym41-1

+3.590

−2.766

Brahms

Sym1-1

−0.613

+1.284

Brahms

Sym2-1

+1.293

−1.099

Brahms

Sym3-1

+0.664

−1.102

Brahms

Sym4-1

+1.056

+0.221

Bruckner

Sym0-1

+2.239

+0.724

Bruckner

Sym2-1

+1.340

+0.537

Bruckner

Sym3-1

+2.014

+0.150

Bruckner

Sym4-1

+1.559

+0.128

Bruckner

Sym5-1

+0.658

+1.639

Bruckner

Sym7-1

+1.881

+0.502

Bruckner

Sym8-1

+0.451

+1.321

Bruckner

Sym9-1

+1.002

+1.457

Mahler

Sym1-1

+3.436

−0.820

Mahler

Sym2-1

+1.406

+0.864

Mahler

Sym3-1

+1.650

−0.116

Mahler

Sym4-1

+1.489

−0.419

Mahler

Sym5-2

+0.044

+1.115

Mahler

Sym6-1

−0.101

−0.028

Mahler

Sym6-4

−0.233

+0.397

Mahler

Sym7-1

−0.688

+0.739

Mahler

Sym8-1

+0.558

−0.689

Mahler

Sym9-1

−0.515

+1.286

Mahler

Sym10-1

−1.545

+0.489

Sibelius

Sym2-1

−0.362

−0.814

Sibelius

Sym3-1

+2.893

−0.097

Sibelius

Sym5-3

+1.395

−0.610

Sibelius

Sym6-1

+3.319

−2.752

Sibelius

Sym6-4

−0.034

−0.914

Sibelius

Sym7

−0.397

−0.812

Sibelius

Tapiola

−2.162

−1.589

Shostakovich

Sym9-1

+1.716

+2.914

Shostakovich

Sym10-1

−0.983

+2.834

Pettersson

Sym6

−0.983

+0.286

Pettersson

Sym7

−0.235

+0.780

Pettersson

Sym8

−0.009

+0.444

Pettersson

Sym9

−1.836

+1.218

Pettersson

Sym10

−5.147

−1.805

Pettersson

Sym11

−5.286

−1.767

Pettersson

Sym12

−4.446

−1.051

Pettersson

Sym13

−3.468

−0.240

Pettersson

Sym14

−2.443

−0.049

Pettersson

Sym15

−4.042

−0.110

Pettersson

Sym16

−3.246

−0.168


付録D:作品別全指標計算結果


(2026.5.5 公開, 5.21 再計算結果で差し替え)